監査のエアポケット
2021/05/20
公認会計士の行う財務諸表監査ですが、金融商品取引法193条の2で上場会社等に受けることが義務付けられています。
上場会社等の財務諸表については、公認会計士監査の結果としての監査意見でその適正性が担保されることになります。
監査意見については、KAMにより、以前より詳しく開示されることになったことはいいことですが、思うところはいろいろありますので、別の機会に書ければと思います。
また、会社組織には業務部門から独立した内部監査部門があり、これが企業内部の業務監査・会計監査を行っています。そして、会社には監査役(監査委員会)という機関があって、これが取締役の業務執行を監査しています。
この3つの監査のことを三様監査といい、お互いが機能することで会社全体の管理(内部統制と言います)が効果的・効率的にできることになります。
しかし、この三様監査にもエアポケットのような落とし穴があります。
それは、公認会計士の監査(財務諸表監査)は、グループ会社全てに及ばないということです。
具体的には、財務諸表監査には、監査法人側に監査要員、監査時間、監査報酬という制約があり、財務諸表の重要性の観点から、例えば売上高等の基準で、上位2/3に含まれないグループ会社は監査対象から外すということです。このため、企業グループの中で重要でないと判断された会社には、公認会計士による監査が行われないということになります。また、上位2/3に入っているからと言っても、売上規模等の重要性が低い会社は、1年間に2~3日しか監査を行わなかったり、全社統制という経営層に対する質問だけで済ましている会社もあります。一方で、公認会計士が監査しない会社には、会社独自の内部監査部門がない場合が多く、監査役も親会社の経理部員が兼務しているというように監査機能が不完全となっています。
これが監査のエアポケットになります。このため、こういった会社では様々な管理が不十分であり、不正が生じやすい状況となっています。
実際、親会社からみて、曾孫会社の社長が起こした不正により、親会社自体の土台が揺らぐという事件も起こっています。
この監査のエアポケットとなっている部分についてチェックを行う体制の構築が必要になります。
税理士の行う巡回監査によって内容のチェックを行い、不正があれば摘発することがその一助になるのではないでしょうか。(三鷹の税理士・公認会計士事務所)