内部監査で発見した不正①
2021/06/04
- これは、私が監査法人勤務時代に内部監査のアウトソーシングを実施している時に発見した事例です。
B to Cの会社で、個々のお客様に様々なサービスを提供しており、仕事上、現金売上が多く、業務の終了後に経理課長が店舗での売上現金をまとめて銀行入金するという体制を取っていました。
そのプロセスは、一日の売上をレジ担当者が集計し、集計表と現金を経理課長に渡し、経理課長が翌日の朝に銀行に預けるというもので、会計システムへの入力と預金通帳の記帳は当該経理課長が行っており、現金の取扱と記帳の業務の分離はありませんでした。
内部監査を行った際に、会計システムから出力される普通預金の入出金の動きと預金通帳との動きが一致していないということに気付きました。
経理課長に理由を聞いたところ、月中は自分の口座に入金し、月末に会計システムと一致するように会社の口座に入金していたとのコメントでした。
具体的には、経理課長は回収した日次売上の現金を会社の預金口座ではなく、自分名義の預金口座に入金していましたが、一方で会計システムには日々正しく入力していました。
そのため、日次の預金残高と会計システムの預金残高は当然一致しておらず、月末にこの不一致額を経理課長が会社の預金口座に入金して、月末と翌月初の時点の残高を一致させていました。
月中の会社資金を私的に流用していましたが、当人は、月末時点で残高が合っているから問題ないと開き直りました。
いくら言い訳をしたところで、会社資金の横領の事実には変わりないため、調べたところ、総額で1500万円の横領となりました。
その理由は、税務に関する通信教育を申し込んだ際に、その相手先が素性の悪い会社であり、騙されて、多額の年会費とセミナー出席料を請求されていました。
自分の給料だけでは対応できなかったことでした。会社に1か月間は自分が管理している現金があったことから、請求されている分を抜いており、月末には、高利のノンバンクから借りて補填していたとのことです。
当人は、いつかはバレると思っていたとのことでした。
この会社は東証一部上場企業の曾孫会社でしたが、いくら看板が大きくて、上の方の会社はしっかりしてても、末端までは行き届かないという事例でした。
なお、金額的重要性がないとの判断により、一般には開示されていません。