書籍『生贄探し/暴走する脳』を読みました
2021/06/14
会計事務所的には全く関係ない話題ですが、コロナ禍の下、お勧めできる本だと思いましたので、紹介します。
書籍「生贄探し/暴走する脳」
中野信子/ヤマザキマリ著
講談社+α文庫
2021年4月発刊
新聞広告で紹介されていたので、読んでみました。
私にとっては、中野信子さんも、ヤマザキマリさんも、これまで著作等を読む機会がなく、初めて読みました。
中野信子氏の方は、脳科学の研究者ということで、お名前だけはあちこちで拝見していたと思いますが。
コロナ禍になって、我々を取り巻く環境、そして生活は一変しました。
「生贄探し」とは過激なタイトルですが、みなさん思い当たる節があると思います。
この本では具体的には、ネットの誹謗中傷で追い詰められて亡くなった女子プロレスラーの木村花さん、ダイヤモンド・プリンセス号に乗船していて陰性になったのに引っ越しを余儀なくされた方等が挙げられています。他にも、早い段階で罹患した芸能人への誹謗中傷や、営業している飲食店へ嫌がらせの張り紙がされたニュースもありましたね。
中には、私も「叩く」行動まではとらなくても、批判的な意見に同調したくなるニュースもあったとは思います。しかし、どうしてこんなにも過激に叩く人たちがいるんだろう、と嫌な気持ちになったものです。
そういった心理について、脳科学者の中野信子さん、「テルマエ・ロマエ」の漫画家・ヤマザキマリさんが主に対談の形で、深くそして多面的に考察している本です。
中野信子氏によると、日本人は他国よりも顕著に「スパイト行動(相手の得を許さない、というふるまい)」をしてしまう傾向があるそうです。協調性が高いことの裏返しでもあるようです。Win-winよりもlose-loseを指向する構造を持っていると指摘していて、「どちらも得をする」というより「私が損をしているのだからお前も損すべきだ」と考えがちで、これは日本特有でみられるものだそうです。
ヤマザキマリ氏は、ローマ史に造詣が深い方なので歴史上の人物(ネロ、フェデーコ2世等)を挙げながら、人間の本質的な心理「自己承認欲求」について考察をされています。ローマの皇帝一族のどろどろした人間関係の裏にどのような心理が働いていたのか、現代のエリートとその母親にも通じる根深い心理の考察は、なかなか興味深いです。
お二人の対談は、人間としての業を鋭く見つめたうえで、誰の心にも湧きあがる負の感情からどのように自由になれるかという解決策をなんとかひねりだせないか等、温かな視点も持ち合わせています。
コロナ禍で生活が変わって見えてきた人間の心理、日本人の特徴なるものについて、この本を読んで、じっくり考えてみるのもよいのではないでしょうか。人としてよりよく生きるヒントが得られると思います。