内部監査で発見した不正④
2021/07/05
- 少額減価償却資産の横領
現行の税制に基づくと、固定資産には、取得価額により一括償却資産(10万円以上20万円未満:3年間の均等償却)と少額減価償却資産(10万円未満:取得時に費用処理)に区分され、それぞれに応じた会計処理が行われます。
なお、中小企業・個人事業主については、総額300万円に達するまで1件当たり30万円未満の固定資産は取得年度に費用処理することが認められています。(令和4年3月31日まで)
ここも重要性の観点から、公認会計士の監査対象外となっている会社でのことです。
ここで問題があったのは、少額減価償却資産であり、取得時に費用処理されることから、固定資産台帳に記録しない運用として全社レベルでの固定資産としての管理対象外となり、取得した部門で独自に管理するという扱いになっていました。
その会社の内部監査において、消耗器具備品費の元帳を通査していると、タブレットやデジカメの購買が年度内にそれぞれ4~5回見られました。
これらの取引につき、購買申請書から決裁書を見たところ、全て取得した部門の特定の課長が申請し、自分で決裁していました。
当該課長に問い合わせると、現場を視察した際に記録するため必要であり、購入したとの回答でした。また、管理台帳を作成しているかとたずねたところ、作成していないということでした。
そこで、誰が何処の現場でどのような機種を使用しているかということについて、再度問い合わせたところ、全て自分が保有しており、自宅にあるとの回答でした。
上司である部長にこの件について問い合わせたところ、10万円未満の購買の決裁については、全てこの課長に任せていたとのことであり、課長が自分で購買申請し、決裁していたということが判明しました。
他の購買案件について調査すると、外付SSD・マウス・メモリ・ディスプレイ等の情報システム関連機器が課長により申請され、自分自身で決裁されていました。これらについては、社内にないものも多くありました。
この件については、横領の可能性もあることから、監査途中であったけれど、当該会社の社長に報告し、 内容を調査し、しかるべき処置を取るように伝えました。
この結果、決裁権限の厳格な運用の徹底を行うと共に、社員全体にコンプライアンス教育を行うことになりました。