内部統制の整備の見落とし事例(三鷹の公認会計士・税理士のブログ)
2021/07/11
子会社を監査している中で、内部統制の整備のエラーによる不正を発見しました。
当該子会社の経理課長は米国公認会計士の資格を有しており、会社として小口現金は保有せず、立替払いの後日振込を原則とし、売掛金の残高確認、棚卸資産及び固定資産の実地棚卸についても、部下の経理課員を現場に立ち会わせることを積極的に行い、管理者としては十分であるかに思えました。
会社の業務における内部統制の仕組みの導入も積極的に行っており、網羅的に統制が構築されていると思われました。
しかし、意外なところに盲点がありました。
それは、出張における新幹線回数券の管理に関することでした。
出張の際の新幹線利用については、親会社が新幹線回数券をまとめて購入しており、子会社の総務部が必要枚数を親会社に伝えて入手し、後日親会社からの請求に基づいて支払うという形でした。
当該子会社では、出張予定者が「新幹線回数券利用申込書」に必要枚数を記載して総務部に提出し、総務部が親会社から受け取った回数券を本人に渡した時点で旅費交通費として処理していました。
そして、出張後に出張報告書により、新幹線代以外の諸費用の立替精算が行われていました。
内部監査の際に、「新幹線回数券利用申込書」を通査したところ、新幹線回数券1冊(6枚綴り)として購入され、摘要欄を見ると、4枚は出張に使用されているが、2枚は「申込者本人が管理」と記載されているものが数件ありました。ちなみにすべて同一人でした。
これについて、経理課長に未使用の新幹線回数券の管理はどうなっているのか聞いたところ、経理部・総務部には未使用の新幹線回数券を管理する仕組みはないということで、未使用分の管理については、こちらが指摘するまで意識していない状態でした。
すなわち、新幹線回数券の未使用分については、存在することを把握しておらず、残高管理を行っていませんでした。
申請から、切符の入手とその会計処理まで完全に行われていましたが、未使用回数券が発生した場合の残高管理については管理の仕組みである内部統制が存在していませんでした。
未使用分について、当該申込者を調査したところ、同様の手口で過去から余計に新幹線回数券を横領しており、金券ショップで換金していたということが判明しました。
当該申込者の話によると、ある時、予定していた出張が中止となったにも関わらず、新幹線回数券の返却要請がなく、回数券を保有していることを忘れて、新たに申請したところ、そのまま回数券が支給されたため、魔が差して横領してしまい、そこからばれないように年に数件、同様の手口で横領していたとのことでした。
内部統制を理解している管理者がいても内部統制の仕組みが足りなければ不正を誘引することになった事例です。